あいつ、プロレイザーもどきを捨てるってヨ

いつもより早く起き、

つけたテレビに映し出されたのは、

知事の所業だった。

あいつは悪い奴だとコメンテーターが言う、

街角のインタビューを装って、

マスコミが用意した演者も悪口を言う。

そう、

世の中には共通の憎むべき敵が必要だ。

ただ、

そんなことは俺には関係ない。

都民ではないからな。

愛車のブガッティに火を入れ、

いつもの時間に駅の掲示板を確認する。

そこにWXYの文字は無い。

今年に入ってから、

その文字を見かけたのはたった一度。

迷い犬の搜索だった。

依頼主は小学生で、

報酬は折り紙の手裏剣だった。

仕事の話はやめよう。

こんな時は趣味のことでも語って

気を紛らわすに限る。

孔子だか、新渡戸稲造だかが言っていたさ。

水槽に草を入れて育てる。

そんな趣味聞いたこと無いって?

だろうな。

日本じゃ300人ぐらいしかやってないさ。

レタスの水耕栽培なら見たことあるって?

銀座のビルでやってるやつか。

いや、食うために育ててるんじゃぁ無い。

ただ、

葉っぱを育てて、

伸びすぎたら切って、

いい形に育ったと

自分に言い聞かせるだけの趣味だ。

だれも共感しない趣味だし、

草だって感謝してない。

それはいいんだ。

趣味とは自己完結が丁度いい。

収入の不安定な探偵業、

自分を満足させられて、

ワンコに日に2回の餌をやれれば、

それでいいんだ。

また仕事の話になりそうだ。

水槽の話だったな。

そう、

俺は、

自作のプロレイザーもどきを

ずっと愛用してきたんだ。

刃こそはADAだが、

本体はお粗末な手作り品だったよ。

水槽がアクリルになって、

それを使うことは出来なくなったんだ。

アクリルを傷つけぬよう、

労わるよう、

ガラスの掃除には、

スポンジを使うようになった。

こんなスポンジや、

あんなスポンジを…

形状は機能的だが、

機能美を備えているかって言われれば、

答えはNOだ。

良いところは、

どっちも108円だっていうところだろう。

そんな不満を抱えつつも、

苔掃除なんて、

月に一度だからな。

と自分に言い聞かせる。

新宿の飲み屋のママから

電話がかかってくるのと同じタイミングだ。

余談だが、ママは一見40後半に見える。

だが、

4月に孫が生まれたってヤスに聞いたよ。

あー、そう、

ここ1月ほど、

コケが結構出てくる。

陽気のせいか?

そういえば、ブセも花盛りだ。

ブセの葉保護月間とやらで、

貝類を全て隔離した所為もあるだろう。

水槽自体、

放置できる安定期までは達していない。

ただ、

月2で掃除する時が今だ。

となると、

この道具では心許ない。

24口径のサブ装備以下だ。

俺はメインは44口径か10mmと決めている。

ブローバック?

ダメだダメだ、

銃はリボルバー、

命を預けるならそれしか無い。

今日はもう遅い、

グラスのバーボンを呑み干して寝るとしよう。

翌日から、

水槽の壁面掃除用具を探す旅が始まった。

だがそれは、

迷子の子犬ちゃんを探すより、

ずっと大変な仕事だった。

群馬じゃ数少ないペットショップや、

熱帯魚屋を地道に回った。

「情報は足で集めろ」

探偵の師匠が言っていた言葉だ。

名だたるホームセンターも行った。

が、ペットコーナーにしか行かなかった。

生活雑貨コーナー、

そして、

水回り、

トイレコーナーなどには近寄りもしなかった。

諦めかけていたある日、

ググル先生なる人と出会い、

いろんな写真を見せてもらった。

彼は世界中のありとあらゆる写真を収集している。

そう、情報屋だ。

その中に、

水槽の掃除で、

便所ブラシを使いこなす、

偉人の姿を見かけた。

彼が持っているトイレブラシが欲しい。

それの情報を半月かけて集めた。

そして、

今日、

手に入れることが、

これだ。


スクラビングバブル
シャット
流せるトイレブラシ
ハンドル1本+ブラシ4コ


箱の中には、4つに分けられたそれが入っていた。

俺は、大統領を狙撃したあいつと同じように、

その部品をひとつひとつ、

20年来付き添ってきた、

バービー人形を、

愛でるかのように組み立てた。

自立型だ。

専用のスタンドで、

聳え立つように粋がってやがる。

お前一人じゃ何もできないくせに。

俺がうまく使ってやるさ、子猫ちゃん。

そんな声を自然とかけていた。

そいつの全長は500mmほどだ。

伝説のフェラル・グールからドロップする、

レジェンダリーな匂い(にほい)すらする。

手が赤いのは、強烈なHDRの仕業で、

実際に鬱血している訳じゃぁないぜ。

そのギミックは秀逸だ。

武器作業台で開けば、

パイプボルトアクションピストル以上には

なるだろう。

掴むも離すも親指次第。

アメリカの大統領も、

核の発射ボタンは親指で押すって、

錦糸町じゃ、もっぱらの噂だ。

だが俺は、

そこにパラグラムバレットなんぞ詰めやしない。

俺が仕込むのは、

GEKIOCHI–KUN

そいつだ。

どうだこの射程範囲。

アクリル水槽のリブを

ものともしないアーチ形状。

物陰に隠れたあいつもバッツシステムで

イチコロだ。

これさえあれば、

水槽内に蔓延る、

税金の無駄遣い野郎なんて、

あっという間に駆逐して、

健全な都政に導ける、

そんな気すらしてきたよ。

叔父貴…

今日も、

足りないアルコールを補充すべく、

西新宿に向かう。

明日も、

明後日も…。

fin

酔っ払って着地点も定めずに、

記事を書くとこういうひどいことになるという、

教訓だと思っていただければ、

是幸いdeth。

付属の「流せるブラシ」には、

洗剤が付いているので、

絶対に水槽内には入れないでね。

お兄さんとの約束だよ!

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あいつ、プロレイザーもどきを捨てるってヨ」への2件のフィードバック

  1. 手も濡れずミッションコンプリート。

    ググル先生は伝説の存在と思っていたが
    まさか実在したとは…な。

    探偵の腕、鈍ってはいないようだ。

    xyz

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